野良猫「テンテン」の居場所
野良猫「テンテン」の居場所
秋風がひんやりと肌に触れたある朝、私はいつもより早く目を覚ましました。
外はまだ薄暗く、静けさが漂っています。
普段のように寝ぼけ眼でスマホをチェックする代わりに、今日は少し足を伸ばして近所の有名な寺院までウォーキングに行こう思いました。
その寺院には観光客が絶えず訪れますが、早朝なら静かな空間が広がっています。
寺院のすぐ脇を流れる川沿いに、私は足を踏み入れました。
川の水音に包まれながら、ゆっくりと歩き、2キロほど先にある吊り橋へ向かいました。その橋を渡り、山沿いの道を下ろうと決めました。
道のりは長くなく、心地よい汗をかきながら足を進めました。
途中、ふと目に留まったのは、山の切り株に横たわる白いものでした。
辺りの枯れ葉に紛れ、あまりに目立つ白色に引き寄せられました。
近づいてみると、それは小さな猫でした。
まるでその場に溶け込んでいるかのように、じっと静かに横たわっていました。

その猫は、薄汚れた白な毛並みに大きなグレーが複数、そして黄土色ぽいトラ柄の尻尾を持っていました。
目をよく見ると、片方は水色、もう片方は黄色、オッドアイの猫です。
しかし、目の前にいるその猫は、どこか儚げで、孤独な印象を受けました。
私はそのとき、何も食べ物を持っていませんでした。
せめて何かあげたかったのですが、仕方なくその場を後にしました。
けれども、その猫のことが気になり、頭から離れませんでした。
翌日の早朝、私はエサを持って車を走らせました。
再びその場所に着くと、猫は昨日と同じ場所にいました。
しかし、私が近づくと、猫はひょいと山を登り、木の上へと逃げてしまいました。
まるで私を試すかのように、少し離れたところでじっと様子を見ていました。
結局、私はエサと水をその場所に置き、少し距離を取って待つことにしました。
30分ほど経った頃、猫はゆっくりと降りてきて、エサを食べ始めました。
その様子を見ていると、他にも数個の透明な容器が置かれているのが見えました。
おそらく、私と同じように、この猫を心配している人たちが時々エサを置いてくれているのでしょう。
私はその猫を、これからも見守り続けようと思いました。
数日後、朝から雨が降り続いていました。
あの猫が気になって仕方がなく、車を走らせてその場所に向かいました。
すると、そこには猫の姿はありませんでした。
私は車を降りて、周囲を探し始めました。やがて、少し離れた岩陰に小さく丸まっている猫を見つけました。
雨の中、ひっそりと身を寄せ合っているその姿を見た瞬間、私は胸が締め付けられるような思いに駆られました。
これから寒くなる中で、このままでいいはずがありません。
その日のうちに、妻と一緒に近隣のホームセンターで捕獲機とゲージを購入し、再び猫の元へ向かいました。
時刻はすでに夕方、辺りは薄暗くなっていました。捕獲機を設置し、エサを置いてしばらく待ちました。猫は警戒しながらも、少しずつ近づいてきました。
そして、ついに捕獲機の中に足を踏み入れ、無事に捕まえることができました。
車に乗せて自宅へ急ぎ、ゲージを組み立てて猫を入れようとした瞬間、猫はスルリと隙間から逃げ出し、部屋中を駆け回りました。
私は驚きながらも、必死に追いかけ、妻がようやくバスタオルで包んで捕まえてくれました。ゲージに収めた時、心から安堵しました。
家に迎え入れたその猫に、私たちは「テンテン」と名付けました。
あの寺院近くの山を思い出しての名前でした。
テンテンは、最初こそ私たちに警戒し、何日もエサを食べませんでした。
しかし、少しずつ環境に慣れ、ゲージから出てくるようになりました。
やがて、先住メス猫のジジとメルとも少しずつ顔を合わせるようになりましたが、最初はやはり距離を置いていました。
私たちは彼のために、一階と二階で分けて生活空間を作り、彼が落ち着けるようにしました。
それから一年が経ちました。
テンテンは今でも私が近づくと、「シャー!」と威嚇してきますが、それでもどこか安心した表情を見せることが増えました。
今日もまた、アニマルフェンスの前で、彼女たちを待っています。

私は静かに思います。
あの日、あの山の中で見つけた野良猫が、今は私たちの家族の一員となり、こうして静かな時間を共に過ごしていることが、どれほどありがたいことか。
テンテンには、寂しい場所ではなく、温かい居場所があります。